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Council for Sports Ecosystem Promorion

2024年04⽉05⽇記事 / コラム

第3回:スポーツベッティングの合法化が進むアメリカで“起きている”こと

スポーツエコシステム推進協議会(C-SEP)が、アスリートとアスリートを取り巻く全てのステークホルダーに知っていてほしい情報を発信していく本連載、第3回は、スポーツベッティングの合法化が進んでいるアメリカで、何が起きているのかを取り上げます。


当然のことながら、合法化による影響は功罪両面でさまざまです。「功」の代表例のひとつは、合法市場で上がった収益が社会課題解決に使われていることです。収益の行き先は最終的には州であり、教育や福祉、ギャンブル依存症対策など各州が抱える社会問題の解決に使われます。


一方、「罪」の代表例のひとつはギャンブル依存症患者の増加です。実際、The National Council on Problem Gambling(略称NCPG)の試算によれば、合法化後の4年間でギャンブル依存症に陥る可能性が30%上昇したそうです。

このような状況の中で、先ごろ大手スポーツベッティング事業者7社が、Responsible Online Gaming Association(略称ROGA)を立ち上げ、2,000万ドル(日本円で約30億円)を投じて課題解決に向けた活動を開始しています。

「功」「罪」両面あるのが、放映権料の高騰です。合法市場における賭けの対象は多種多様で、勝敗を試合開始前に賭けられるだけでなく、試合中に刻々と変化する戦況に応じて賭けることもできます。野球なら投手が三振をいくつとるかとか、バスケットボールなら次の得点がどうやって入るかなどの試合中の経過が賭けの対象になっています。

このため、試合を最初から最後まで見る需要が急増し、その結果放映権料が高騰するという現象が起きました。放映権料収入が増えるとリーグから各チームに分配される収入が増え、選手に還元される「功」の面がある一方で、高すぎる放映権料を払えず地方放送局が破綻する例も出ています。

合法化に伴い規制が進んだ結果、違法市場が縮小しているというデータも出ています。例えば、米国各州で最も早く合法化したニュージャージー州では、同州における掛け金総額の約80%が合法市場に流入しているという推計があり、違法市場が大幅に縮小しているそうです。



参考資料①: 平尾覚=稲垣弘則=北住敏樹「諸外国におけるスポーツくじ・スポーツベッティング関連法規制の動向① - 米国(上)-」(西村あさひ法律事務所・外国法共同事業 スポーツビジネス・ロー ニューズレター2024年4月1日号)