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Council for Sports Ecosystem Promorion

2024年06⽉06⽇記事 / コラム

第10回:日本で海外のスポーツベッティングサービスを利用する行為の適法性(その2)

スポーツエコシステム推進協議会(C-SEP)が、アスリートとアスリートを取り巻く全てのステークホルダーに知ってほしい情報を発信していく本連載、前回は、日本から日本人が海外のスポーツベッティングサイトにアクセスして賭けをすることが合法だという、虚偽の説明をしている事例の1つとして、「アクセス先が合法国のライセンス取得業者だから大丈夫」だと言っている例を取り上げました。

今回は2つめ。「必要的共犯」という法律用語を使って誤解を招くような事例を取り上げます。


まず、必要的共犯とは、「もともと複数人が関与することが予定されている犯罪」です。代表的な事例が刑法197条の贈賄罪です。公務員が金品を受け取ったとしても、それが公務とは無関係のものだった場合、受け取った公務員は収賄罪に問われませんので、贈った側も贈賄罪に問われません。

受け取った側に収賄罪が成立しない場合、贈った側にも贈賄罪が成立しない。これが必要的共犯です。

この必要的共犯を持ち出して、日本から海外の合法事業者のサイトにアクセスしてサービスを利用して賭けを行うことは合法だ、というのは、アクセス先の事業者が合法州の合法事業者だから日本の刑法の賭博罪で処罰の対象にならない。だからそこへアクセスして賭けを行った日本居住者も賭博罪で処罰されない、というロジックのつもりなのだと思います。


しかし、必要的共犯は、自分以外の誰かの関与は必要ですが、その「誰か」に犯罪が成立して処罰対象とならなければ成立しないかというと、そんなことはありません。例えば刑法175条1項のわいせつ物頒布罪も、わいせつ物を頒布する相手がいなければ、犯罪として成立し得ないため、必要的共犯の典型例であるとされています。

しかしながら、刑法は、わいせつ物を頒布する行為は犯罪として処罰の対象としていますが、頒布されたわいせつ物を受け取った者に対しては犯罪は成立せず、処罰されることはありません。

そのため、日本から海外の合法事業者のサイトにアクセスしてサービスを利用して賭けを行った場合、主催者である海外の合法事業者は処罰されない場合でも、アクセスをした日本居住者には日本の刑法が適用され、賭博罪で処罰の対象となります。


近年、警察庁や消費者庁は、日本から海外のオンラインカジノサイトにアクセスして賭博を行うことは違法であると注意喚起しています。

初犯だと50万円以下の罰金又は科料ですが、常習化している場合は常習賭博罪となって、罰則も3年以下の懲役と、格段に重くなります。

今年2月には、日本から海外で合法的に運営されているオンラインカジノを利用する様子を配信していたYouTuberが常習賭博罪で逮捕され、その後同罪で起訴され、有罪判決を受けるに至っています。スポーツベッティングサイトを利用することも同様に賭博罪が成立します。

是非注意をしていただきたいと思います。