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Council for Sports Ecosystem Promorion

2024年06⽉12⽇記事 / コラム

第11回:日本で海外のスポーツベッティングサービスを利用する行為の適法性(その3)

スポーツエコシステム推進協議会(C-SEP)が、アスリートとアスリートを取り巻く全てのステークホルダーに知ってほしい情報を発信していく本連載、前回までで「日本から日本人が、海外のスポーツベッティングサイトにアクセスして賭けをすることが合法」だという、虚偽の説明をしている事例を紹介しました。

11回目となる今回は、賭博を行う場を提供する側を処罰する、刑法186条2項の賭博場開帳図利罪(とばくじょうかいちょうとりざい)を取り上げます。


刑法では、賭博を行うことを185条で禁じているだけでなく、利益を得る目的で賭博行為を行う場所を提供することも186条2項で禁じています。それが賭博場開帳図利罪で、刑罰は3か月以上5年以下の懲役と、常習賭博罪よりもさらに重くなっています。

賭博場開帳図利罪が成立するか否かは、「賭博場」の解釈が問題になります。

ここで、賭博場とは、「賭博を行う場所、賭博のための場所的設備」を指すと考えられています。その場所や設備は常設のものであることや、賭博のために特に設けられたものである必要はないとも考えられています。


また、「賭博者が自ら賭博場に参集せず、開帳者の使者を介して、又は電話等により開帳者と交渉するような場合でも、その事務を行っている場所は賭博場となり得る」ともされています。

第9回でも触れましたが、賭博罪は国内犯です。国内で行われた賭博行為のみが処罰の対象になります。同様に賭博場開帳図利罪も国内犯で、賭博場が日本国内にないと処罰の対象となりません。


海外のサイトの場合、賭博場は海外にあり、賭博場開帳図利罪に問えないかというと、実はそうではないと考えられます。手がかりになる考え方を、2017年2月9日に大阪高等裁判所が示しています。

この判決の事案は、LINE上で、野球賭博の申し込み等のためのグループを作成し、そのLINEを利用して賭客からの申し込みを受け、賭客それぞれの申し込み口数や勝ち負けの金額を集計し、勝った賭客に配当金を交付していたというものです。

この事案で、大阪高裁は「申し込みを受け集計する者の所在地、賭客の居場所等を含んだその全体が、1つの場所として賭博場を構成すると見るのが相当」だと判断しています。

この考え方に従うならば、海外のスポーツベッティング事業者に日本人が日本国内からアクセスして賭ける場合、賭客である日本人の居住地も含んだ全体が賭博場となると考えられます。


つまり、賭博場の一部は日本にあると考えられるわけで、賭博場開帳図利罪が成立する可能性は否定できないのです。