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Council for Sports Ecosystem Promorion

2024年08⽉19⽇記事 / コラム

第14回:違法業者の共犯にならないために

スポーツエコシステム推進協議会(C-SEP)が、アスリートとアスリートを取り巻く全てのステークホルダーに知ってほしい情報を発信していく本連載、前々回までの4回は、日本から海外のベッティングサイトにアクセスして賭けをすると、賭博罪に問われるリスクがあることについて取り上げてきました。

14回目となる今回は、先ず、海外のベッティングサイトが日本でプレーする選手や日本のスポーツ団体の権利を侵害している事実について取り上げるとともに、日本の個人やスポーツ団体が知らず知らずのうちに違法業者の共犯になってしまう事例を紹介します。


海外のスポーツベッティングサイトの中には、日本でプレーする有名選手の画像や日本のスポーツの試合中の動画、所属球団・クラブのロゴなどが掲載されていることがありますが、選手本人にも、球団やクラブにも無断でやっている場合が多々あります。

日本でプレーする選手の肖像は肖像権やパブリシティ権、試合中のプレーを撮影・録画した動画は著作権、クラブのロゴは商標権といった法的権利によって保護されており、これらの権利は選手個人やスポーツ団体が保有しています。したがって、こういったサイトの行為は、日本でプレーする選手や日本のスポーツ団体の商標権、パブリシティ権、著作権などを侵害し、損害賠償請求や、差し止め請求の対象にもなり得ます。また、前々回までにご説明した通り、日本に対してサービスを提供している海外のスポーツベッティング事業者については、賭博罪や賭博場開帳図利罪が成立し、刑事罰の対象となる可能性が否定できません。


スポーツ団体としては、こういったサイトを運営する事業者に対し、警告文を送ったり、民事訴訟を起こしたりといった法的手段を講じるなどといった対応を講じることが考えられます。

また、上記のとおり、日本に対してサービスを提供している海外のスポーツベッティング事業者は刑事罰の対象となるため、日本のスポーツ団体がそのような事業者の行為について告発することがかんがえられますが、一方で、海外の捜査当局との連携や証拠収集が困難であること等の理由から摘発は容易ではないという事情があります。


次に、日本の選手個人やスポーツ団体が知らず知らずのうちに違法業者の共犯になってしまう事例を紹介します。

最近、海外のスポーツベッティングサイトを著名人がYouTube等で紹介し、自ら動画内で賭けを行って見せる事例や、選手本人が、日本では違法なオンラインカジノ事業者やスポーツベッティング事業者の日本向けの広告に、自身の肖像を提供してしまっている事例が確認されています。勝手に無断で使われたのではなく、です。


こういった行為を行った場合には賭博罪や賭博開帳図利罪の幇助犯が、例えば動画内でユーザーに対して賭け行為を煽ってしまった場合には同罪の教唆犯が、それぞれ成立してしまう可能性があります。

幇助犯は、「ある者の犯罪行為を容易にしたと言える場合」、そして教唆犯は「ある者の行為をそそのかした場合」に成立しますが、こういった行為は海外のスポーツベッティングサイトやユーザーの賭博行為を容易にした、又はそそのかしたといえる可能性があるからです。


また、日本のスポーツ団体が、海外のスポーツベッティング事業者にスポンサーになってもらった場合、選手やスタッフの肖像、チームやクラブのロゴなどのサイトへの掲載を求められる可能性があります。

それらの行為は、海外のスポーツベッティングサイトにユーザーを勧誘する行為であり、日本に居住するユーザーによる賭博を容易にした、又はユーザーをそそのかしたと評価され、スポーツ団体自身が賭博罪や賭博場開帳図利罪の幇助犯などに問われる事態を招きかねません。

スポーツ団体にとってスポンサーは活動資金を提供してくれる貴重な存在ですが、全く無自覚なまま犯罪行為に手を染めてしまう事態は避けなければなりません。


スポーツ団体、選手、スタッフは、スポンサー、特に海外の事業者と取引を行う際は、是非とも専門家を通じて、その事業者が、主な事業だけでなくグループのどこかで違法な事業を行なっていないかどうかまでしっかり調べたうえで、意思決定をしていただきたいと思います。